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亡国官僚と政権交代 [雑感]

政権交代の最大の利点は、溜まりに溜まった汚泥のようなしがらみを押し流し、何度も途中付加されて一貫性を失った法律の矛盾を解消して、行政をより現実的でスマートなものにする絶好のチャンスであること、それに尽きる。いわば「リフォーム」のようなもので、増改築を重ねてボロボロになったマイホームを、最新の技術を使いながら、より使いやすく無駄の少ない「住みやすい家」に建て替えるのだ。

生物に例えれば「新陳代謝」である。新陳代謝とは、成長にそぐわなくなったり、遺伝子に傷が溜まって老化した細胞を破壊し、新しい細胞に置き換えることである。それは、生物にとって「生きること」そのものである。一方、本来なら破壊されるべき老化した細胞が死なず、分裂・増殖・転移を繰り返して正常な細胞の活動を邪魔する病気を「がん」という。早く見つけて取り除けば良いが、手遅れになると命を取られてしまう。

政権交代は「国という生き物」にとってヘルシーなことである。がん細胞のような「しがらみ」や「矛盾」を取り除いて健康を取り戻す絶好の機会であり、そのチャンスをいかに活かせるかが、国家の「生命力」と国民の「健康度」の指標の1つであろう。


前置きはそのくらいにして、先月末から凄いニュースが流れているのに、ネットもマスコミもなぜか黙殺している。何かと言えば、複数の元外務事務次官のリークで、「1960年にアメリカと結んだ核持ち込みに関する密約について、歴代の外務次官ら中枢官僚が引き継いで管理し、官僚側の判断で一部の首相、外相だけに伝えていた」というものだ(下記引用1)。

で、その経緯は日本語の内部文書に明記されて外務省北米局と条約局(現・国際法局)で管理されてきたという。アメリカの公文書館には「密約」を証明する文書が残っているので、いよいよ日本側でも証言が出たことになる。

このニュースの最大の恐ろしさは「密約の存在」ではない。「密約」自体は外交上欠くべからざるものである。主権者たる国民の代表者である歴代の首相や大臣に引き継がれ、時代の要求に応じて改訂され、きちんと記録文書に残され、隠す必要がなくなった時に公開されさえすれば良いのだ。
問題は太字の部分、つまり「国家間の密約という最大級レベルの国家主権を、一部の官僚が完全に私物化していた」という点である。これは国家国益上の大問題であり、クーデターにも匹敵する反国家的行為だ。これではまるで官僚主権国家の末期像である。

この件について、ぶら下がり会見で「事務次官とアメリカのどちらがウソをついているのか?」と聞かれた麻生首相が「アメリカ」と答えていたので、麻生首相も外務省に説明されていない一人なのだろう。

この話にはさらに続報があり、実はそちらのほうが現実的な問題、つまり日本の国家主権と安全を実際に危険に晒している。それは「宗谷や津軽など5つの重要海峡の領海幅を3海里(5.6km)に留め、法的に可能な12海里(22km)を採用してこなかったのは、米軍の核搭載艦船による核持ち込みを政治問題化させないための措置だった」というものである(下記引用2)

海上保安庁のホームページには特定海域について具体的に図示されているので、引用する。ちなみに水色が公海、青色が領海、濃青色が内水である。内水とは、領土と完全に同一の国家主権(領域権)が及ぶ領域である。領海においては領域権は制限されている(国際交通の利益のために、通過する船に無害通航権を保障することが、領海を持つ国に課されている)。
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/ryokai/tokutei/tokutei.html

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↑以上4枚、海上保安庁のホームページより。水色の部分が公海で、前後の海域で12海里ある領海幅が海峡内だけ3海里に狭められており、これによって各海峡の真ん中に日本の主権が及ばない公海が確保され、どこの国のどんな船が通過しても国際法上問題がない。

日本がアメリカの核の傘の下にあるのは言うまでもないことで、核を積んだ艦船や潜水艦が日本の領海を航海していることはどの国だって承知している公然の秘密である。ところが、非核三原則への抵触を非難されることを恐れた政府が、領海法上認められている領海を削って5海峡に公海部分を意図的に残し、これを「特定海域」と称して、核搭載艦船に通航させることで、批判を回避してきたのだ。つまり、「国内向けの政治的体面を保つ(国会答弁の整合性を取る)ために、海峡の領海を少なく主張します」というものだ。

おかげで、輸出用の核ミサイルを積んだ北朝鮮の貨物船が対馬海峡や津軽海峡の公海上を堂々と通過し、テポドン騒ぎどころか自衛隊の演習時にさえ中国やロシアの情報収集艦船が堂々と海峡内で情報収集できるのだ。公海上は日本の主権は及ばず、外国船に対する臨検は出来ないからだ(公海上で他国の船を強制的に臨検すれば、それは船籍のある旗国の主権を侵したことになり、宣戦布告に相当する(アメリカは軍事力を背景に平気でやってしまうが)。一方、領海内なら、領海を有する国に危険を及ぼす船舶の領海通過を国内法で制限できることが、海洋法等で認められている)。

竹島や北方領土で日本の主権が奪われていると主張する方々は、この現在進行形で存在する国家主権の明らかな放棄をどう考えるのか?純粋に政治的体面のために国家主権をぶん投げて日本を「今ここにある危機」にさらす現政権が続くことを望むのだろうか?民主党の朝鮮・中国寄り姿勢批判以前に、与党はとうの昔に北朝鮮や中国、ロシアに国家主権を差し出しているではないか。

宗谷、津軽、対馬などの重要海峡は本来であれば、そこを通過しなければならないロシアや北朝鮮と交渉するための重要なカードであり、主権を主張して有利な条件を導き出すための有力な「核」である。それを投げ出して国内の体面を保つ与党と「密約」を首相・外相に伝えない亡国官僚たちに、この国を任せておいて良いのだろうか?

それにしても、こういう「過去のしがらみや体面維持や利権維持のための矛盾・問題点」があまりに多過ぎて本当に嫌になる。政権交代はそれを解消する機会ではあるが、そのためには交代後の政権を国民がガッチリとコントロールして、亡国官僚とその利権拡大のしくみを除去していかなければならないのだろう。

日本の進行がんの治療の最前線は、外科手術と抗ガン剤と放射線療法などを組み合わせる集学的治療である。日本の政治も、集学的治療を要するような進行度に達していることはどうやら確かのようだ。

追伸:
同様の経済的背景の中で腐った政党政治に嫌気がさし、軍によるクーデターを国民が支持したのが昭和ヒトケタの日本だが、政党の代わりに軍官僚が登場しただけで官僚による亡国政治は続き、やがて本当に国を滅ぼしてしまった。やはり、行政や政治を現実社会に対応したものへと換えるには、政党政治による政権交代しかないのだろう。

----引用1----
核持ち込み密約、外務次官ら管理 首相、外相の一部に伝達

 1960年の日米安全保障条約改定に際し、核兵器を積んだ米軍の艦船や航空機の日本立ち寄りを黙認することで合意した「核持ち込み」に関する密約は、外務事務次官ら外務省の中枢官僚が引き継いで管理し、官僚側の判断で橋本龍太郎氏、小渕恵三氏ら一部の首相、外相だけに伝えていたことが31日分かった。

 4人の次官経験者が共同通信に明らかにした。

 政府は一貫して「密約はない」と主張しており、密約が組織的に管理され、一部の首相、外相も認識していたと当事者の次官経験者が認めたのは初めて。政府の長年の説明を覆す事実で、真相の説明が迫られそうだ。

 次官経験者によると、核の「持ち込み(イントロダクション)」について、米側は安保改定時、陸上配備のみに該当し、核を積んだ艦船や航空機が日本の港や飛行場に入る場合は、日米間の「事前協議」が必要な「持ち込み」に相当しないとの解釈を採用。当時の岸信介政権中枢も黙認した。

 しかし改定後に登場した池田勇人内閣は核搭載艦船の寄港も「持ち込み」に当たり、条約で定めた「事前協議」の対象になると国会で答弁した。

 密約がほごになると懸念した当時のライシャワー駐日大使は63年4月、大平正芳外相(後に首相)と会談し「核を積んだ艦船と飛行機の立ち寄りは『持ち込み』でない」との解釈の確認を要求。大平氏は初めて密約の存在を知り、了承した。こうした経緯や解釈は日本語の内部文書に明記され、外務省の北米局と条約局(現国際法局)で管理されてきたという。

2009/05/31 16:58 【共同通信】

-----引用2-----
核通過優先で5海峡の領海制限 元外務次官証言

 政府が宗谷、津軽など五つの重要海峡の領海幅を3カイリ(約5・6キロ)にとどめ、法的に可能な12カイリ(約22キロ)を採用してこなかったのは、米軍の核搭載艦船による核持ち込みを政治問題化させないための措置だったことが21日、分かった。政府判断の根底には、1960年の日米安全保障条約改定時に交わされた核持ち込みの密約があった。複数の元外務事務次官が共同通信に証言した。

 これらの海峡は、ソ連(現ロシア)や中国、北朝鮮をにらんだ日本海での核抑止の作戦航行を行う米戦略原子力潜水艦などが必ず通らなければならないが、12カイリでは公海部分が消滅する海峡ができるため、核が日本領海を通過することになる。

 このため、核持ち込み禁止などをうたった非核三原則への抵触を非難されることを恐れた政府は、公海部分を意図的に残し核通過を優先、今日まで領海を制限してきた。表向きは「重要海峡での自由通航促進のため」と説明してきており、説明責任を問われそうだ。

 外務次官経験者によると、領海幅を12カイリとする77年施行の領海法の立法作業に当たり、外務省は宗谷、津軽、大隅、対馬海峡東水道、同西水道の計5海峡の扱いを協議。60年の日米安保改定時に密約を交わし、米核艦船の日本領海通過を黙認してきた経緯から、領海幅を12カイリに変更しても、米政府は軍艦船による核持ち込みを断行すると予測した。

 そこで領海幅を3カイリのままとし、海峡内に公海部分を残すことを考案。核艦船が5海峡を通過する際は公海部分を通ることとし、「領海外のため日本と関係ない」と国会答弁できるようにした。

2009/06/21 16:27 【共同通信】

----引用ここまで------
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